たとえば基準線にかさぶたを
建築はそれが常に何かと接続した状態で成り立っていて、それらとの取り合いの中で生まれてしまうものである。そこに成立する建築は個々様々に多様な様相を見せるものであり、それ自体が或るひとつの街のような複雑さを持っているのだ。しかし、都市は見えない力によって操作され、建築は理想的な都市を実現するために均質化していく。近代都市計画思想のもとに生まれた都市には同じような景色が広がっていて、強大な圧力によって過度にパッケージされてしまった慣習的な建築形態は本来の目的やモノの在り方とは逸れた形で引用されている現状がある。つまりそれは建築の近傍に存在するネットワークとの接続を断絶しながら、常識というパッケージのみを拠り所として建築が構築されていることを意味している。このような建築の在り方に対して、何か他の可能性を模索できないだろうか。それが僕の卒業設計の原点である。
設計を始めるにあたって題材としたのは、都市計画道路という一つの強大な力であった。都市計画道路によって建築群が解体されることを契機に、それに伴って生じる建築の自律的な要請に対して慣習的な構法を召喚し、近傍のネットワークを取り込みながら建築をオーバーホールしていく。そのようにして強大な都市作用と衝突しながらも小さな建築が生き残ってしまったとき、そこに見出される建築には従来の慣習的な構法の肥大化や組み換えが起こり、部分的に組みあがる都市計画道路施行後の都市は、不揃いで歪になりながらも、近傍との接続状態にある建築によって彩られるのではないだろうか。
このような仮説の元、ひとつの試論を書き上げるべく卒業設計に取り組んだ。
受賞
第53回JIA東海支部設計競技 銀賞
2018年度 明治大学卒業設計 佳作
せんだいデザインリーグ2019 卒業設計日本一決定戦 10選
福岡デザインレビュー2019 優秀賞
都市・まちづくりコンクール2019 10選
赤レンガ卒業設計展2019 10選
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