⊿xの献身

 日常を支える構造は日々更新され続けていて、新たな環境に適応するために目まぐるしいサイクルの中でたくさんのものを新たに生産しては消費している。しかし、そのサイクルは私たちの目には見えず、限られた資源とそれが大量に破棄される現実が世の中に知れ渡ることはほとんどない。

 本設計では、更新に伴ってサイクルから外れた「資材」「場所」「形式」を組み合わせて建築を作り上げることによって、その後の使われ方をデザインした。廃棄されるまでの寿命を延ばすことによって対象の転用可能性を拡大し、生産そのものの在り方を批評することを一つの評価軸とした。

 舞台は近い将来の日本。どこにでもあるような何気ない場所にもその時代の特色が表象されていて、いつかその形が役目を終える。そういう「場所」に、ある時代にどこか他の場所で役割を担っていた「形式」と、構造への貢献が高いが故に多量に廃棄され、且つどこでも手に入る汎用可能な「資材」を組み合わせて新しい建築を構築する。どこか見覚えのある空間は、どこか歪に、しかし新しい風景を私たちの生活に根付かせてくれる。

 これは有限の資源によって無限の未来を創造する試みである。

共同制作者

十文字萌

受賞

ERI学生デザインコンペ2019 優秀賞