テクトニック・ラブ

 愛とは、ある二つ以上の事柄の間における関係の性質である。

 例えば、ドアと壁の取り合いにおける蝶番はモノとモノの間に生じる愛の形であるし、その扉を開けるために私たちが握るドアノブはヒトとモノとの間に生じる愛の形であるといえよう。ヒトとヒトの関係も、その延長線上にあると言えるのではなかろうか。

 ここである一つの仮説を立てた。

「人間は乾式で、愛はその取り合いで生まれる」

ヒトとヒトとの関係は液体のように混じりあえるものではない。むしろ、固形の物質が組み合わさるときのように他者を受容し、自己を変化させることによって成立するものなのである。

 このような仮説の元、愛し合う二人が生活を共にするための新たな器を作ることを試みた。新しい器はお互いの背景として存在する身体化した環境、つまりそれぞれ実家を平面的な中心で重ね合わせることで形成された。

 家と家というモノとモノの取り合いの中に、設計者であり住まい手である私たちが解釈を与えることでモノとヒトの関係から空間が生じ始める。ここにおける設計行為とは不自由にも思える形に意味を見出し、そこに新たな生活を見出すことなのである。

 このようにして生まれる形態は生活を取り巻く様々な距離感を編成し、ヒトとヒトの関係性すらも書き換えていく。

 これが私たちの愛の家である。

共同制作者

十文字萌

受賞

第15回ダイワハウスコンペティション 最優秀賞

掲載

新建築住宅特集 2020年1月号